天使のような笑顔で
『アイ、元気にしてますか?』


安以が見つけた、ケガした仔猫。

あの小さかったアイも、ここ一カ月ぐらいで随分と大きくなっていた。


「あぁ、元気だよ。最近また餌を食べる量が増えてさ、俺のおかずまで狙ってるよ」


安以は、あれから数回しかアイに会えてないから。

毎日のように、こうして電話で俺に様子を訊いてくる。


『じゃあ、今度会う時はキャットフードを持って行きますね』


そう言って笑っている安以に。

ほんのたわいもない話のつもりで、俺はこう尋ねた。


「そういえば、安以は志望校決めた?新学期に進路希望の紙、出さなきゃいけなかったよね?」


だけど、安以からは返事が返ってこなくて。

突然、俺達の間に気まずい空気が流れ始めてしまった。


俺、何か変な事言ったか……?


ただの、進路希望の話。


決めたとか、まだ決めてないとか。

そんな言葉が返ってくると思ったのに。


この沈黙は、一体何なんだろうか?


「安以……?」


何だか心配になってきて、俺はそう名前を呼んだ。

もしかしたら、電話が繋がってないとか?なんて思いながら。


『あっ、あぁ、ごめんなさいっ』


だけど、電話はちゃんと繋がっていた。

慌てたように、安以が謝ってくる。
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