天使のような笑顔で
「どうしたのかと思ったよ。何かあった?」


『ホント、ごめんなさいっ。で、何でしたっけ?』


「だから、進路の話。志望校は決めた?」


どうしたんだろう?と思いつつ、俺はもう一度そう尋ねた。


『あぁ、志望校の話ですよね。まだ、決めてないんです』


そう答える安以は、別にいつもとは変わらない気がして。

俺は、それ以上気には止めなかったんだ。


電話だから、もちろん安以の顔の表情は見れないわけで。


どんな顔をして、この言葉を彼女が言ってるかなんて。

俺は考えもしなかったんだ。


「そうだよなぁ。安以はここに来たばっかりだし、どんな高校があるとかも分からないよな」


『そっ、そうなんですよね。全然分からないから。真吾は決めたんですか?』


つき合う事になって、俺の事も“真吾君”から“真吾”へと呼び方が変わっていた。

まだ慣れないから、なんだか照れくさくてくすぐったい。


「とりあえず、バスケの強いトコがいいかな。なるべくなら、公立で」


うちは、しがない中流家庭で。

私立みたいにお金のかかる学校に行くのは、少ししのびなかった。
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