天使のような笑顔で
そして、いよいよ県大会の準決勝の日。

いつも試合を観に来てくれるのに、今日は安以の姿はどこにもなかった。


寝坊…かな?

それとも、場所が分からないとか?


今日の試合は、隣の市の体育館で行われているから。

この辺の地理にまだ疎い安以なら、迷ってる可能性は十分ある。


既にコートで練習している俺の携帯は、もちろん更衣室のロッカーにあるし。

試合時間も近いから、抜けだして探しに行く事も出来ない。


「真吾ー、頑張れよー」


2階の観客席から、そう声を掛けられ。

見上げると、手を振っている和也の姿があった。


その瞬間、俺は持っていたボールをコートの上に置き。

2階に向かって、走り出していた。


安以を見かけなかったか、確かめたかったし。

見てないなら、代わりに連絡を取って欲しかった。


人がたくさん行き交う中を、ぶつからないようにすり抜けながら。

俺は、さっき和也がいた辺りを目指して急いだ。


「和也っ」


辿り着いた先には、和也と島崎先生の姿があった。

2人は、何事かとこっちを窺っている。
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