天使のような笑顔で
「お前、何やってんだよっ?練習中だろっ?」


驚きを隠せない様子で、和也は慌てて席を立った。

先生は座ったまま、じっと俺を見上げている。


「安以…見なかったか?」


少し息を切らせながら、俺はそう尋ねた。

これはきっと、走ったせいなんかじゃなくて。


安以がいなくて、動揺してるんだ……。


「桜庭さん?だって、今日は来れないんだろ?」


「えっ?来れないって何で?」


それは、初耳だった。

だって昨日電話で話してた時も、彼女はそんな事言わなかったし。


観に来てくれるって、約束したはずなのに。


「ここまで一緒に来ようと思って誘ったら、都合が悪くて今日は観に来れないって今朝電話で言ってたけど?お前知らなかったの?」


「いや、昨日は別に何も……」


じゃあ、今朝になって都合が悪くなったって事か?

でも、俺には連絡来てないし。


それか、俺が着替えてから連絡くれたとか?

携帯がロッカーだから、連絡つかなくて。


どっちにしても、事故や迷子じゃなくて良かったよ。


「いろいろ、準備で忙しいんじゃないのか?急だったみたいだし」


そう声を掛けてくれたのは、先生で。

だけど、言ってる事の意味が良く分からなかった。
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