猫に恋する物語
+++
男はつい数分前に若い娘たちがいた空間を見据えた。

そうか。

あの娘たちは過去の俺のような追放されたサングレルにあったんだな。

そしてそのサングレルは俺と同じようにこの世界に戻ったわけか。

違うことと言えば向こうで俺があった少女はこちらの世界まで追いかけて来なかった、ということか。

考えを巡らせながら男は更に考える。

あの娘たちは大胆にも故郷を捨てて来た、ということなのだろう。
男は過去に思いを馳せる。

あの優しかった少女は今も元気だろうか。
今はもう、おばあさんになっているだろう。
時間の流れがこちらの方が遅い。

今でも急にサヨナラも言わずに居なくなったことは後悔している。
でも仕方がなかったんだ。
あの娘と会ったサングレルなら気持ちを分かってくれるだろう。この世界に戻ってきた理由もきっと俺と同じだろうからな。

出来ることならさっきの若い娘2人の力になってやりたかった。だが俺がしちゃあ意味がない。ここに娘たちを送り出した向こうの世界の番人は元サングレルの俺の力は求めていないだろう。


自分で乗り越えろ。じゃないとここで生きてくことは出来ない。




男がまだ若かった時、まだサングレルだった時に巡り会った少女の口癖はこうだった。



“あきらめないで”


男はとっさにあの娘たちに伝えた。


なぜか、あの少女が、さっきの娘たちにその言葉を伝えることを望んでいるような・・・。


そんな、気がしたのだ。



< 101 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop