猫に恋する物語
今晩の夕食の席はここにきて初めての静かなものになった。


シルエットはなんとか盛り上げようと踏ん張っていたが□がだんまりを決め込んでなかなかうまくいかない。


私も、盛り上がる気にはなれなくて自然と食べることに集中してしまう。





ここにきて分かったこと。
食料は限られているということ。


ここにきて分かったこと。
ここの人々は本当に食べ物を大事にしているといこと。


ここにきて分かったこと。
人は皆あったかいということ。




ここにきて、ずいぶんと家事ができるようになった。

料理のレパートリーも増えた。

未だにたくさんある見た目はかなり、“わんだふる”な魚の名前は覚えられないけれど。

それでも、最初包丁もまともに握れなかった私からしたらかなりの進歩といえる。

別に上手くなろうと努力したわけじゃなかった。
生活する上で必要だったから上手くなった。



ここにきて学んだこと。
人は追い込まれると何かしらの力を発揮するということ。




生きていく上で必要な力は、急激に上達する。

もう一度言おう、人は皆あったかいのだ。

大丈夫だ。

なんとかなる。


おばあさんの言葉を思い出した。


私は決意を固めた。


働こう、と。



―ここで生きていくために。―
―人として成長するために。―








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