猫に恋する物語
□シルエット。私は、私と@はね、今まで食べ物に困ることのない世界で生きてきたんだ

ここの人からしたら、ましてや中心地に住んでいる人からしたら楽園とも天国とも呼べるぐらい、そんな物が満ち溢れていた場所だった。

人々は幸福を求め、不自由を嫌い、発展を望み、不幸を取り除くことに必死な、そんな世界だった。

そんな世界に疑問を抱くことなく、別段、狭いとも感じずにただ時間が流れていくのに身を任せているしかなかった。


シルエットは言葉を心に刻みつけるように聞き入っていた。私たちの故郷の話を。始めて聞く異世界の物語のように。


□ここの世界には人が住んでいるし、空気もあるし、太陽もある。夜も存在すれば、まるで物語の主人公かのように光り輝く星くずたちも存在する。

季節も移り変わるし、花や小鳥や虫たちも厳しい自然環境の中で必死に息をしている。


私たちの世界と何ら変わりない世界。ここはそういう世界。私はそう思った。

だけど、私は生活していく上で何もかもが根本的に違う部分があることに気がついた。



私は□の言葉に驚きを隠せなかった。おばあさんの言っていた意味を理解したのか。


本当の意味で聡くて聡明な人というのは人が変ったように話をするみたいだ。


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