猫に恋する物語
□あきらめたくない。

私は、私たちは可能性を捨てたくない。


この町の住人と本当の意味で仲良くなりたい。


苦悶の表情を浮かべたあの男の子を笑顔の似合う元気な男の子にしてあげたい。


私は私の理想を貫きたい。


それとも、この町では挑戦することも許されないの?


そう聞いた□の表情はいつになく真剣で、凛々しくて私には眩しすぎた。


――そして――。


シルエットの頬を一筋の涙が伝う。


その涙を見た□はフッと力を抜きほほ笑みを浮かべた。


□大丈夫だよ。シルエットは優しい子だよ。


この街の風習にならってしか生きられない事実を、これまでずっと受け止めてきたんだから。


見捨てられる人間も傷付くだろうけれど、忘れちゃいけないことがある。


見捨てる方の人も何も感じないわけじゃない


シルエットは人だよ。人間だよ。人と呼べるものじゃないよ。

だってずっと苦しんできたんでしょう?見捨てている自分に嫌気がさしていたんでしょう?


シルエットは□の問いかけに対して、ただただ涙を流していた。


□も最初から答えは期待していないようだった。




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