猫に恋する物語
―カスっカスっ―

俺が冷蔵庫をひっかく音が虚しく無人の部屋に響く。

・・・届かない!

半ばショックを受けながらすることもなく部屋を動きまわる。

するとキッチンの床にお弁当箱が落ちていた

狂喜乱舞した俺だが一瞬にしてその思いが消えた。

*・・・これは少女のだろうな。

お腹すくだろうな。暇だし届けてやるかな。
暇だしな。やることもないし。
別に少女のためじゃないしな。

俺は弁当箱を何とか口にくわえ玄関に行く。

少女の言った通り、玄関のドアに開けられている通り道は丁度いいものだった。頭で蓋を押し開けて外に出た。

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