猫に恋する物語
恐怖に駆られたけれど、ひとまず□には心配させまいと私は笑顔を作る。

―そのとき―。


ぐうああああああおおおおおおおおお

突然、地鳴りのような音が辺り一面に鳴り響いた。


―次の瞬間―。

ボワアッといつまでたっても、どんなに下りても代り映えのしなかった景色の中に異質な物体が浮かび上がる。


私は恐怖で一瞬にしてカチコチに固まった。

□ちょっ・・ちょっと・・・あれ熊じゃないの?

□が青ざめたミイラのような顔つきで話しかけてくる。

ちょっあんたの顔の方が怖いわ!・・・じゃなくて!

@そう・・・見えるわね。


□・・・・・。
@・・・・・。

□@ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

□しっ・・・しっ・・・死んだふりぃいいいいいいいいいいいいいいいいい。

そう言って□は地面に大の字に横たわった。

@あっあああああ、あんたさっきと言ってること違っ・・・・。
ってちょっと待てよ。ん?まてよ、メタボはこの世界から来て猫で喋れたんだから熊も同じなんじゃないの?

それを聞いた□はスパッと起き上がり服についた枯葉を払い一息。


□いやぁー昼寝は気持ちのいいものだね。

@・・・・。あんたねぇ!罰として話しかけなさい。幸いなことにこちらにはまだ気がついていないようよ。 さっきあれだけ絶叫したのに奇跡ね。

□・・・・。なんでよ!

@文句を言わない!さっさとやる!

私の理不尽極まりない命令に□はクチを尖らせながらも渋々従う。


さてこの時、□が熊に話しかけなければ、私が□に命令しなければ、私たちは獣に追いかけられるという恐怖を味わわなくてすんだ。が、今更後悔しても仕方がない。



熊に言葉は通じなかった。


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