いじめられっ娘。



『――それで、発生してしまう発煙硫酸に希硫酸を加えて、濃硫酸にするの。で、この(2)で欲しい答えは、発煙硫酸――分かった?』

「ぁあ、なるほど…っ!」

『はい、次。これは硝酸の問題。硝酸の化学式は?』

「え?えっと…う。」

『はぁ…。H₂NO₃、これ覚えねぇと、解けるもんも解けねぇっつの。今、もう覚えとけよ。』

「は、はいっ…!」


本当、私に勉強を教えてくれる時だけは、別人みたいに会長は優しい。

完全に勉強不足な私を怒鳴ったりしないし、重要なポイントはちゃんと指示してくれるし。

学校にいる先生よりも、先生に向いていると思うほど。


『それで、硝酸の作り方も、硫酸と同じ。硝酸の場合は窒素を酸化させて、出来た一酸化窒素を酸化させて二酸化窒素を作って、水に通すだけ。』

「え、硫酸の時みたいに発煙硝酸…?みたいなのはでないんですか?」

『でないな。硝酸はただ水に通すだけでいい。ただし、気をつけてほしいのは、二酸化窒素を水に通して硝酸を作る時、一酸化窒素もできるという事。これは反応式を書けば分かる事なんだが――』


会長に教えてもらいながら、今回の化学のテストは赤点は免れるんじゃないかと、早くも思っていた私だった。




< 55 / 67 >

この作品をシェア

pagetop