番外編
そう言った健の声色は妙に楽しげで。
何かある、とは思ったが深く聞くことはしなかった。
健が龍之介の心情を見透かしている気がして口を開きづらかったというのが本音でもあるが。
「…遊佐、探せばいいわけ?」
そう電話越しに伝えた頃には、もう学校の前に着いていて。
よろしくーと機嫌のよさそうな健の声に電話を切ると、そのまま校内へと足を踏み入れた。
(…探す、か)
この時の龍之介はまだ知らない。
(また、泣いてねぇといいけど)
踏み入れた先、ものの数分で目的の人物を見つけることを。
(どうせなら、笑っててほしい)
自分がその相手にどうしようもなく恋い焦がれることも。
空は昨日の雨が嘘のように青く染まっていた。