番外編
それは銀色の毛を隠した大きな狼が、雨空の下膝を抱えて涙する小さな兎を見つけた次の日のこと。
pipipipipi....
「……っ、うるせー…」
布団の中から擦れ気味の唸るようなくぐもった声が聞こえ、同時に部屋中に響いていた電子音が止まる。
耳元で鳴るアラームとはまた別のその音に、無理矢理夢の中から引き上げられたのは"孤高の狼"こと大上龍之介。
カーテンの隙間から漏れる日の光が彼の眉間に深い谷を刻ませて。
不機嫌そうに枕元にあった携帯電話を手に取りちらりと液晶画面に映るデジタル時計を見れば、ちょうど八時を示していた。
「…まだ寝れんじゃねぇかよ…」