番外編




心配でね、とカラカラ笑いながらそう言う健に、こいつ本当に心配しているのだろうかと疑いたくなる。


しかし、その話題に自然と龍之介の足が止まった。

そして思考を巡らせる。




(うーって…遊佐のことだよな?それ以外にはいねぇ、よな…?)




そして思い出すのは昨日雨の中で一人泣いていた小さなウサギの姿と、かかってきた夜の電話。


その瞬間カッと己の耳が赤くなるのがわかった。


思わずケータイを持っている手にも力が入って。


それに気付けないほど、龍之介の頭の中には昨日の光景が走馬灯のように流れていた。


膝の上で抱き抱えた小さな体と栗色の髪。


弱々しい声と、柔らかな頬の感触。




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