向井君は向井さん
ウィッグをかぶり、髪を前に流すと某ホラー映画みたいだ。
「なあなあ、姉ちゃん
呪ってやろうか?」
と冗談混じりで言うと
「死にたい?ブッ殺す
わよ」真顔で返された。「そんな下らない事してないで座りなさい」
椅子のクッションをポンポン叩く。
「何も真顔で返さなくても良いじゃんか」
椅子に座ると目の前には幾つものメイク道具が
並んでいる。
「動かないでね。
動いてアイラインとか
グロス、ズレたらぶつからね」
「はいはい…」
背筋を正し、体を石みたいに硬直させて姉のさせるままにした。
メイクに関して男の俺がどうこう言える訳も無いので…。
しかし…メイクが施されてゆく自分の顔を見るのは不思議な感覚だ。
自分が自分じゃなくなってゆくみたいだ。
これが化粧か、女の子って面白いな…。
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