向井君は向井さん
姉と由衣さんが通う高校は地元では有数の進学校だ。
あんな馬鹿げた提案をしてくる姉ではあるが意外と頭は良い。
余談ではあるが、俺の
通っていた学校は有数のヤンキーが集まる学校であった。
ボクシングをしていた俺に絡む奴はいないに等しかったが。
「ここから遠いんだっけ姉貴の学校って…」
姉が不在の場合、姉の事は姉貴と呼ぶ。
姉の前で姉貴なんて呼ぼうものなら「言葉遣いが乱暴よ!お姉様にしなさいよね!」とひっぱたかれる。
さすがにお姉様は嫌だと断り続け姉ちゃんで落ち着いたが。
「電車乗り継いで、そう20分くらいかしら」
「そっか、満員電車とか苦手だな俺…」
他校の生徒からサラリーマン、駅のホームの混雑ぶりにげんなりする。
「あ、そう」
「ん?」
由衣さんは思い出した様に爪先立ちで俺の耳元に囁く。
「痴漢いるから気をつけてね?」
「ちっ…かん?」
男である俺にとっては
身近な冤罪として怖がってはいたが、まさかされる側にまわるとは…。
< 18 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop