向井君は向井さん
「…で?」
「もう悔しくって悔しくって!ゴリラのクセして知恵つけてんじゃねえよって、さー!」
「で、その顔?」
「あ?」
「いや、その一巻の終わりみたいな…」
「違うわよ、まだ続きがあんのよ!
でね、そのゴリポンの
彼女が女のプライド傷付いただの何だの言ってきてさー、何だっけ、あの河川敷で殴り合いする
ヤツ、一対一で…」
「…タイマン?」
「ソレー!そのタイマンする羽目になったの…。酷くない!?」
「うん、そうだね」
何にせよ、他人ごとだ。いい暇つぶしになったと健人はソファーで横になりテレビをつけた。
「ちょっとー!姉が
こんな目に合ってるのに何、くつろいでんのよ」「行かなきゃいいだけの話じゃん」
「行かなかったら行かないで毎日、付きまとわれるでしょ!」
「知らないよー、第一
俺にどうしろと?」
待ってました、その台詞と言わんばかりに姉は
ズズズイッと顔を寄せて「あのさ…提案…あるんだけどな?」と不適な
笑みを浮かべた。



あの笑みを浮かべた姉は要注意だ。
ロクな提案しない。
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