向井君は向井さん
「何にせよ、俺はそんな提案に協力はできないからさ!第一、姉ちゃんのケンカだろ?」
「か弱い女の子がケンカなんかできる訳ないじゃない…」
ふと思い出す。
一昨日、姉のプリンを
無断で食べた際に喰らった、ミサイルキック…。一週間前、姉の着替えを見てしまった際に喰らった、コブラツイスト…。

「何よ、その顔?」
「いや?とにかく…俺は嫌だ!」
「…仕方ない。
いくら欲しい?」
姉はブランド物の財布を取り出し万札を数枚チラつかせる。
高校退学し、自宅警備員である俺は久々見る諭吉に生唾を飲む。
「私の提案を飲んでくれたらー、払ってもいいわよー?」
「グッ…ググ…」
堪えろ、堪えるんだ俺。女装なんて生き恥だ。
「どうしようかなー?
欲しいバッグあるし。
使っちゃおっかな?」
財布をしまおうとする姉に「ちょっ!」と思わず静止してしまう。
イカン、イカン…ぞ。
金の魔力に魅了されてしまっている。
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