体だけでも繋ぎ止めたい


「り……」

「姫、わりぃ」


私の声より先に
陸の嫌な言葉の方が早かった。


陸はベットから起きて、何事もなかったかのように部屋を出て行く。


乱れたベットと置き去りの私は
動くまで時間がかかった。


そしてリビングから聞こえる
陸の話し声は、嫌でも聞こえてくる。



「今から行く」


「オレが会いたいから気にするな」


「あぁ。じゃあ後でな」



ドアくらい閉めてよ……

私には決して言わない言葉

私には出さない優しい声



他の女との会話を聞かせないでほしかった……



「姫?」


再び戻ってきた陸は
申し訳なさそうな顔をしていた。


言わなくていい……


「ごめんな」


「………」


謝らないで……

惨めな私をもっと惨めにするその言葉


「また連絡する」




虚しく閉まる玄関の音と同時に
私の中の何かがプツンと音を立てた気がした。




ーーー待つだけの女はもう限界……
< 23 / 85 >

この作品をシェア

pagetop