体だけでも繋ぎ止めたい



陸のパーカーからはシトラスの香りがする。


陸の匂い。


今だに剛と健斗がカニ探しをしている所に、陸の姿がある。


「おめーらバカだろ」


陸のその一言に対して
二人は何か言い返してたけど

不思議と、陸の声しかハッキリと聞こえなかった。


私の耳は、なんとも都合がいいらしい。



私はパーカーのお礼を言おうと
陸の元へ行こうと足を進めた。


砂に足を取られるせいでもないのに
なんだか足が重い。


キラキラと眩しい海を背にして立つ陸は
それはそれは絵になる。



見惚れていると、陸と目が合った。


ドキッーーー!


動いていた足が止まる。


陸の視線はいつも力強い。


周りには確かにたくさんの人がいるのに
陸と目が合った瞬間に、全ての音がかき消されたようだ。



私はその視線に、一分と持たなかった。


何か話さなきゃ……



「……あっーー」


でも

必死に絞り出した言葉は

言葉にはならなかった。




だって……

陸が笑ってるーーー

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