体だけでも繋ぎ止めたい
幸せの形
それからしばらくして
陸と彼女が戻ってきた。
陸の隣で嬉しそうな顔をする彼女を見て、辛くないわけではないけれど
逃げ出したいとは思わない。
「さっきは挨拶しそびれちゃってごめんね?久しぶり、姫乃ちゃん」
私よりもはるかに女の子らしい彼女は、自分が可愛いことを分かっているんじゃないかと思うくらいの笑顔を向けてきた。
「深山さん、久しぶり」
陸と付き合い始めるまで
彼女の存在を知らなかった私はそう呼ぶしかない。
姫乃ちゃんなんて、この人の口から初めて聞いた。
「それ、陸のパーカーだよね?」
ーーー!?
私の腕の中には、さっき返しそびれた白いパーカーが確かにある。
自分の体がビクッとしたのと同時に
もの凄く早くなる心臓。
ない頭を必死に使って考えていると
後ろから伸びてきた手。
「あ〜陸、これありがと」
ーーー優夜!?
全身びしょ濡れで、髪をかきあげる仕草がやたら色っぽい。
「えっと……?」
深山さんはキョトンとした顔をして
首を傾げてる。
「ごめんね、陸の彼女ちゃん。オレの彼女がココで着替えるってきかなくて」
「っーー!?」
か…彼女!?
誰が!?
誰の!?
「他の男に見せたくなくてさぁ〜陸がちょうどよく持ってたから隠すのに借りたんだ」
またしても、この男は笑顔で嘘をついた。
それにしたって
あんたは本当、スーパーマンか……
「陸、ありがとう」