体だけでも繋ぎ止めたい
そうして色々あった夏は過ぎ、学校が始まった。
夏の間にやらなければならない課題は全部終わってるし、何も問題ない。
ただ一つを除いてはーー
「姫乃、朝からテンション低いよ」
駅で待ち合わせていた優夜の第一声はこれ。
「だって学校……」
あの海の日から陸とは会っていない。
遊ぶのに呼んでも
陸は一回も来なかった。
最後に会ってから二週間後には
いつ入れたのか家のポストに鍵が入っていた。
それは紛れもなく、私が陸に渡した合鍵。
終わったことを痛いくらい実感した。
「サボるなら付き合うよ」
私の頭にポンと手を乗せてきた。
「え……」
さすが、私の心の中を見透かす
天才スーパーマン。
サボれるならサボりたい。
だけどーーー
「って言いたいけど、すぐに文化祭だから忙しくなるし、無理かな」
一瞬躊躇った私を見て
私の頭を撫でると、行くよと手を差し出された。
またもや、思ってることを
見透かされた。
優夜には本当に敵わない……
そんな優夜に少し癒され
差し出された手を取った。