*SHORT STORY*
それでもやっぱり、龍が好きで好きでしょうがないんだ。
忘れられないでいる内に、1年も経ってしまった。
もちろん今も、忘れられない。
忘れたくないんだ―
龍がいなくなった今、大切な2人の記憶は、あたしの心にしか残っていない。
記憶を想い出にはしない。
どんなに辛くても。
龍との記憶を、このままにしておきたいんだ。
いつまでも報われないあたしを、晴香は気を使うようになった。
6月7日。
龍と出会い、龍を失ったこの日。
あたしはぎゅっと帯を締め、カランコロンと下駄を鳴らし、浮かない顔で河川敷へ向かった。
橋に晴香の姿が見える。
あたしはまた申し訳なさで、ぎゅぅっと心が締め付けられた。