立入禁止
辿り着いた室内に飛び込むかの如く勢いのまま入ると、廊下に響き渡る程に大きな音を立てて襖を閉める。
そして、さっきまで僕が寝ていた布団の中に滑り込み虫のように包まった。
まだ少しだけ生暖かい布団の中に包まったところで、どうしようもない感情が込み上げ我慢していた遂に涙が溢れ始める。
硬い枕に顔を押し付けて泣いていると、襖の向こうから声が聞こえてきた。
「トモヤ」
おばあちゃんだった。
この部屋の中に入ってくるのではないのかと、思わず身を固くしたけれどおばあちゃんが室内に入る気配や様子はない。
「……さっきはじいさんがおがんでもぉてすまんかったのぅ…でもあっこの山はほんまにひゃいな、昔から立入禁止になっとる」
襖の向こうで、ゆっくりとした口調でおばあちゃんが喋り始めた。
布団の中に居ても部屋の外に居る声が聞こえてくるし、もしかしたら逆に僕が泣いている事もバレるかもしれない。
絶対に、バレたくない。
そう思った僕は、枕に顔を押し付けた状態で何も返事せずに黙っていた。