立入禁止

クラッシュ加工されたショートパンツの右ポケットに入っている硬い感触を肌に感じながら双瞼を伏せる。


(でも、この鍵の……車の持ち主は………)


そこまで思考すると冷たい空気が背筋を掠め、女は綴じていた瞼を開いた。

密林で体験した恐怖と絶望感を払うように首を左右に振り、懐中電灯を汗を滲ませたまま掌で強く握り締める。

自分自身と辺りを照らしてくれる懐中電灯に、少しだけ安心感を与えられた。

完全な安心感は、此処から出られたら感じられるだろう。

額の汗も引き、乱れた息も整ったその女は此処から離れる事にした。

まだ吊り橋を渡る音は聞こえない。

もう一度安堵の息を吐くと、懐中電灯をしっかりと持ち直して前を向いた。
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