立入禁止
何者かを理解した途端、恐怖で震え始める身体。
(向こうにいるはずなのに…どうして居るの……!?此処に来た気配は微塵も感じなかったのに……!)
女は白い顔を真っ青に染めて、混乱し、錯乱した。
此処に居るはずのないモノが、目の前に立っているのだ。
それだけで、自分がどれだけ危機的な状況に置かれているのかは解せる。
身体が震えているために、懐中電灯を持つ手も小刻みに動く。
不安定に照らされた"アレ"は怯える女を見て、嘲笑うかの如く真っ赤に濡れた口唇を大きく開ける。
剥き出しの歯には、真新しい、血液が付着していた。
吊り橋を渡ってあちらに逃げなくては!
そう思考した女が身体の方向を転換するよりも早く、"アレ"が背中に飛び掛かった。
「きゃああぁぁああッ!いやっ、離して!この化け物……ッ!」
叫びながら振り払おうと身を捩り必死に抵抗するが、しがみ付いて離れない。