私のヒーロー。
4st
①
「本当にありがとうございました。」
「ああ。」
麻衣の家の前まで送ってもらった私は、深々と渡邉さんに頭を下げた。
「これ。」
車のドアを閉めようとした私に、さっき渡した千円と一枚の名刺を渡邉さんに渡された。
「何かあったら、ここに連絡しろ。」
この人は、なんでこんなに優しいんだろう。
「ありがとうございます。でもこの千円は『これで、子供に旨いもん食べさせてやれ。』
・・・ずるい。
なんでそんな優しい顔するんですか?
そんな顔されたらもう言い返すことなんてできない。
「・・・・・はい。本当に今日は色々とありがとうございました。」
「俺も、今日は助かった。じゃあな。」
そういうと、車は発車した。
長年隠していた思いが、動き出した気がした。