~とある教師と優等生の恋物語~
「専門的な絵を描かない美大生なんてどうでしょう。学芸員なんてどうでしょうか」


数年前、造形学部の中に学芸員養成コースが細々とスタートしたのは耳にしていたけれど。


そのコースでは様々な分野の基礎的な制作を広く浅く学び、残りは知識と一般教養にあてられるのだから、白川の技術でボロが出るということもなさそうだけれど。


「確かにね、『絵の描けない人』って見る生徒達もいるようだけど。学芸員補として経験を積めば学芸員として一生働けるんだ。将来的にも悪くないと思うんだよ。星野洋子の娘として生きていかなきゃいけないあの子には、きっと多少の助けにはなる」


現在の白川程度のデッサン力があれば、あとは学力試験のレベルからしても彼女は冬の一般試験で、かなりの確率で合格することができるだろう、と先生は言った。


翌日、白川にその話をすると


そう、とそれほど乗り気でもなかったけれど、否定もされなかった。


そしてその翌日には白川は


「どうやらその方法しかないみたい、立石美術大学に行く方法は」


と苦笑いした。
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