~とある教師と優等生の恋物語~
学芸員養成コースに的を絞ったため、白川が美術室に来てデッサンをするのは週の半分だけになり、また紫苑の手伝いも復活したそうだ。


今日も抜け殻のような表情でデッサンする白川。


(素のままだと、こんなつまらない顔をしてデッサンするんだな)


なんて発見があって。


そんな白川を見るにつけ「ホントにいいのか」という思いは大きくなりつづける。


聞けば白川は「それしかないんだから仕方ないわ」と言うのだけど。



けど、やっぱ――


「なあ、白川。来週までに進路決定して担任の吉田先生に出さなきゃなんないから……。学芸員でホントにいいのか、よく考えといて」


「またその話?」


「……吉田先生に聞いたんだけど、お前英文科とかどうなの?この際全部忘れて」


「吉田先生ってばお喋り」


「いや、俺が聞いたのね。お前の成績ってどうなのかな~って思って」


「おせっかい」


「したらお前、英語の成績すげェいいじゃん。吉田先生が『自習時間に洋書をよく読んでます』とか言ってたし……」


「趣味だよ。趣味。あたし学科は全部、受験レベル超えてるから。今更ガリガリ勉強しなくていいんだもん」


「英文科とか、考えてみる気はないか?」


作業台から顔を上げると、白川は無機質な顔をして首をフルフルと横にふった。


(ああ、また)


全部を頑なに拒否する顔。
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