~とある教師と優等生の恋物語~
漠然としたものを抱えて、その正体に気づかない振りをして。

今日もデッサンを描く白川を斜め後ろにある作業台に腰掛けて眺める。


(相変わらずつまらなそうだな)


だけどそんな顔をする彼女を俺しか知らないってのはなんとなく“優越感”だ。



不満を抱えた彼女の横顔に秘めた願い。

シンクの乱反射する光を浴びても、どこまでも漆黒の髪の意味。


(ひどく曲がってるようで、ものすごく真っ直ぐなんだよな)


そっと棚から誰のものとも分からないクロッキー帳を出し、静かに開いた。


作業台に転がる鉛筆を拾い、サラサラと紙の上を滑らす。


一度描きだしてしまえば、次から次へと描きたい箇所が出てくる。


デッサンをする白川を横からスケッチした。


角度をかえて何度も。
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