~とある教師と優等生の恋物語~
(あ……)


白川が俺の缶コーヒーをためらうことなく口に運び、その白い喉が小さく上下する。


なんだか見てはいけないものを見た気がして、慌てて視線を壁に移した。


「……」

「……」


サンドイッチを食べ終えて、コーヒーも飲み終えても、少しの沈黙の時を越えても、白川は隣に座ったままで。


「…やっぱ遅くなりそうだから、お前、俺に気ィ遣わないで適当に帰れよ?」


「気なんて遣ってないわよ」


普段遣わない気を珍しく遣ってみたら、見事にピシャリと言い返されてしまった。


「だって修司何時に来るか分からないんだよ?」

「今日はさ、妹が久しぶりに家族で外食しようとかメールしてきたの。だから――」

「なら尚更帰ったほうがいい――」

「あたしが居ないほうがいいんだよ、きっと」

だから9時回ったら適当に帰るから、と感情のない声を出す。

そんなの聞いたらもう『帰ったほうがいい』なんて言えなくて、ただふたりでボーッと長椅子に座っていた。


そして8時30分すぎ、やっと修司からメールが入った。

“すぐ行く”と。
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