~とある教師と優等生の恋物語~
そして俺たちは10分という最短時間でホテルを後にした。


あの時の俺には――


修司から香織を奪ってしまう意気地もなく、香織を一生離さない覚悟もなかったんだ。


修司を泣かせてまで欲しい幸せじゃなかったんだ。


ただ何かを失いたくなかっただけ。


愛しいというよりは、取られたくなかっただけ。


寂しかっただけ。


結局俺は勢いで香織を連れだしたけど、


修司から奪ってその罪の意識を抱えて


その上で香織と幸せになれるなんて到底思えなかったんだ。


*****
***********


「そんな中途半端で終わったの?」


白川の非難するようなキツイ声が病院の廊下に響く。


「……中途半端じゃないよ。ちゃんと終わりもあったから」


(そう。静かだったけど、確かにあった)


白川の指を軽く握り直した。

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