~とある教師と優等生の恋物語~
「じゃ、またな」と手を挙げると、修司はクチャと顔をゆがめるようにして笑った。


ああ、これで良かったんだと改めて思う。


(ほらな?)


香織が修司といることで幸せになって、


新しい命を迎えて、


修司がこうして笑うのなら、


これで正解なんだって思えるんだ。




これがお人好しのマナーなのね、と隣で白川が俺の指をキュッと強く握った。


「大人のマナーって言いなさいよ。あ~、腰いってぇ」


「お人好しも大変だね」


「だーかーらー」


クスクスと白川が笑うたびに紺色のプリーツスカートがフワフワと揺れる。


(ああ、そっか)


揺れる紺と湿気を含んだなま暖かい風が、俺を現実に引き戻した。


ずっと繋いでいた……いや、一方的に上から握っていた手を離して


「白川、送るよ」


俺は先生に戻ったんだ。
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