~とある教師と優等生の恋物語~
教師になると夏休みもあってないようなもので。

夏休みだというのに、サボリにサボった1学期中の生徒の作品の整理や授業計画や2学期の授業材料の準備に追われていた。


休憩、とひとり屋上で煙草をくわえ空を見上げたり、缶コーヒーを手にする、そんなふとした拍子に白川を思い出す自分に苦笑する。


授業で使う予定のキャンバスを運べば、彼女のまとう空気をどうやってこのキャンバスに収められるのだろうと考えてしまう。


(しばらく会っていないのに)


すぐに、あの曲がってそうでひどく真っ直ぐな空気を感じられる。


目を閉じればすぐにうかぶ白川の不満げな表情。


(だいぶ重症だな、俺)


描かないとタローに宣言したばかりなのに、何を女々しくこんなことをしているのか。


「バカバカしい」


(誰も俺が描くことを望んでないのに)


ああ、面倒くせ、と呟いて現実に戻る。


この頃の俺を救ってくれていたのは忙しさだった。


忙しさが少しだけ現実逃避を手伝ってくれていた。


そんな七月の終わり頃だった。


滅多にならない俺のケータイが鳴ったのは――
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