~とある教師と優等生の恋物語~
救急搬送口から病院に入ると受付のおじさんが俺を待ち構えていたかのように顔を出す。


「岸ユカリさんの身内のかた?」と。


「いや、あのっ」


「ジロー!」

少し離れた廊下を白川が小走りで近づいてくる。


「白川、お前――」


彼女のすましていた顔がみるみる歪んでいき、ガンッと彼女が体ごとぶつかってくる。


「いってぇ……」


離せ、と言いかけてやめたのは、腰の辺に巻き付いた白川の腕から小さな振動が伝わってきたから。


「大丈夫か?」


顔を伏せたまま首を横にふる白川。


「とりあえあず病室行こう」


しがみつく白川をひきずるようにして歩いた。


ユカリさんの病室は大部屋が空いていないために個室だった。
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