~とある教師と優等生の恋物語~
「死、んだ?」


「うん。……死んだよ、ユカリさん」


「、」


「だから。海、連れて行ってよ。ベタでいいからさ」


緩和ケアに入っていたユカリさんだから、いつかは亡くなると分かってはいたけれど。


あまりにも突然の事に一瞬頭が真っ白になった。



「でね?ユカリさんの親はもう亡くなってるから、あたしの希望で小さい家族葬をお父さんにしてもらった」


「……そうか」



「最後ぐらいは娘に見送られたいんじゃないかな?って思ったから」


「うん」


聞いてもいない事を、感情のない声でひとつひとつ言葉にする彼女。


「お葬式も全部終わって、49日を待って埋葬する…だ、け」



そしてその語尾が少しだけ震えて、視線が空からゆっくりと俺に移ってきた。



「なんか…全部終わったなって思ったら…急にジローの顔見たくなって……」



と小さく揺れる瞳にはありありと悲しみが見えて。



でもその瞳が涙で溢れることはなく。



それを見ている事しかできない自分の立場が苦しかった。


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