~とある教師と優等生の恋物語~
車の中で買った缶コーヒーを飲みながら彼女ははっきりと宣言した。


「ジロー、あのさあたしもう学芸員になれなくていい。美大も行かない」と。


「え?」


「なんか……もういいって気分なの」


「あ、そうなの?あんなにこだわってたのに?」


そう言えばそうだったね、とフワッと笑う。


「先生は家族って血だと思う?」


「……もし血だとしたら……俺に母親はずっと居なかったことになる」


「え?」


「なんでもねェよ。で、白川は?」


「血だって思ってたの。ずっと。

あたしは、お母さんはお父さんと結婚したから、自動的にあたしが娘になっちゃってきっと困ってるって思ってた。

どっかでお母さんに対しては後ろめたかった。

“あたしがママに連れていって貰えるような娘ならお母さんはサチだけを育てれば良かったのに、ごめんね”って。

だからお母さんを困らせたりしないように生きてきたつもりだったの」


結局すごい困らせてたみたいだけど、と自分の過去に恥ずかしそうにする。
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