~とある教師と優等生の恋物語~
生徒名の欄で確認して、

「桜井ちひろ……よろしくな」


今さらの挨拶をすると彼女は笑顔になった。


「よろしくお願いしま~す」

今どきの口調で明るく返事をするこの桜井にも、白川みたいに何か抱えているモノが少なからずあるんだろうと思うと、人ってのはホントに複雑な生き物なんだとつくづく思う。


「早速なんだけど桜井、進路希望調査でご両親は――」

「あ……ああ、まだ言ってないんだ、美大に行きたいって」


「マジ?そっから?つーかもしかして……」


「大反対だと思うんだよね~。でも――」


「お前そんな他人事みたいに言うなよ。……面倒くせ……いや、大変だな」


「ちょっとぉ、面倒くせェとか言わないでよ。私結構本気なんだから」


「わりィ、単なる口癖だ」


口調のわりに、実は切実な瞳の彼女をつきはすような事はできなくて。


「じゃ、とりあえずは、ご両親と面談かぁ。なんか、ブルーになってきた」


「え?マジ?うわッ、ありがと、島!!」
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