~とある教師と優等生の恋物語~
『高かったんだから大切に読んでね』


『……』


『いーから。はい。いいから。じゃ僕は行くからね』


(やべ…)


慌てて準備室に駆け込んだ。



なんで俺が隠れるのかとも思うけれど。


「よお」


少し時間をおいてから部屋に入ると、いつも通りの白川がいて、ペラペラと洋書をめくっていた。


(人の事どうこう言う趣味ないし。まいっか)


ほおっておくことにした。


「これ今日のモチーフ。頑張ってね」


「……はい」


(あれ?)


いつもだったら『一段と難しいのを選んでません?』とか絡んできて

『んなわけねーじゃん。俺一応教師よ?するわけねーじゃーん』って俺が棒読みして


『すごい棒読みですけど?』


『倉澤先生はこういうのが好きだと思うんだよね~』


『……わかったわよ』
っていう俺の唯一の完全必勝パターンの会話が繰り広げられるはずのところなのに。
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