~とある教師と優等生の恋物語~
『はい』とか答えちゃったよ、この人。


従順だよ、この人!


気のせいかもしれないから、もう一度。


「今日のモチーフこれね」


「はい」


「……」


白川、何も言ってこないし。


しかもその上。慣れた手つきで油絵の具や筆を自分の周りにセットし、椅子に腰掛けた白川から聞こえてくるのは……


「はあ……」


ため息だ。


洋書とキャンバスの間を視線が行き来して、そしてため息の嵐だ。


分かりやすいといったら分かりやすい。


(はあ……)

なぜか俺までため息ついちゃったりして。



ため息ってあんまり何度も聞いてると、うつるんだぜ?



これ、油絵を描く彼女の横の作業台でちまちまと『指導報告書』を書く俺の本日の新発見。
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