~とある教師と優等生の恋物語~
そしてこんな確信を持つと、


(なんでだろ)


どうしても知りたくなってしまったんだ。


香織が同じような感触を抱いていた事と、事情は彼女でさえ知らなかった事でさらに気になって。


ふう、とため息をつく。


ケータイのアドレス帳を開けて、


さっきから『タロー』の文字を画面に出しては消すの繰り返し。


手を離れたボールのように


放物線を描くように、少しずつ離れて行こうと思っていた。


弧を描くように緩やかに、穏やかに、でも二度と深く交わらないように生きて行こうと思っていたのに。


そう決めたつもりだったのに――…


こんな事で……


たかが生徒ひとりの進路問題で


白川杏奈の抱えてる問題で


また自分から接点を持とうとするなんて



(バカげてる。白川杏奈の事を知ってどうするんだ)



そう思うのに、どうしても白川が立石美術大学に固執する理由を知りたかった。

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