~とある教師と優等生の恋物語~
翌日、美術準備室のカレンダーを見てため息をつく。

明日は倉澤アトリエだというのに。

窓際に並べた白川の絵を見ながら、どうしようもない気持ちにさせられた。


だって白川の絵からはやっぱり何も感じられない。


これでは倉沢先生に見せたところで結果は変わらない。


そして――


白川は星野洋子の血をひいていない。


(だったらなぜ?)


答えはそこにあるようで、漠然としていた。

ふと、そこにあった鉛筆をもち、棚の画用紙をひっぱりだす。


久しぶりなはずなのに、握った鉛筆は一度走り出してしまえば留まる事を知らないかのように


遊び回るかのように、黒を落としていく。


(ああ、久しぶりだ)


懐かしいような哀しいような感覚に気分が高揚する。


画面の上には今日の課題のキジの剥製。


俺が描くことにのめり込むまでにきっと大した時間はかからなかったと思う。


どれほどの時間がたったのだろう。


パチンとつけれらた部屋の電気で初めて気がついた。彼女が後ろにいたことに。

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