秘密恋愛
「僕は、この手で人を殺めた殺人犯でキミは拉致された被害者」
さっき見せていた笑顔は、今の聖夜さんの顔にはない。
切れ長の目で私を見下ろしている。
でもやっぱり、いつもと違って冷たい目ではなく、切なくて悲しい目をしている。
「ここで抵抗して叫べば、アパートの住人が助けに来てくれるかもしれないのに……」
「聖夜さん……」
「ねぇ、雪乃?喚き散らしてもいいんだよ?助けてって、大声で叫んでもいいんだよ?」
どうしてそんなこと言うの?
警察には絶対に捕まらない自信はどうしたの?
どうして、いきなり聖夜さんがそんなことを言ってきたのかわからない。
聖夜さんの心の中が読めなくて、私の頭の中はグチャグチャだった。
だけど、私の心の中は聖夜さんへの想いでいっぱいで、収まりきれない想いが溢れ出し……。
気付くと、私の目から涙がポロポロと流れ落ちていた。