秘密恋愛
「お腹、空いてる?何か食べる?」
彼は私の前にしゃがみ、目線を合わせると笑顔でそう聞いてきた。
私は何も言わず、首を左右に振った。
この状況でお腹なんか減るわけない。
食べる気にもなれない。
「いらないの?食べなきゃ元気出ないよ?」
それでも私は首を左右に振り続ける。
もう元気なんてない。
元気なんて出なくてもいいよ。
このまま何も食べずに餓死したって……。
その時、再びスマホがブルブルと震え始めた。
“ブー、ブー”と部屋に響くマナーモードのバイブ。
私はコートのポケットをギュッと握った。