秘密恋愛
玄関のチャイムが鳴った。
聖夜さんは玄関に向かって大きな声を出すことが、もう出来ない。
「あ、開いてます!」
だから聖夜さんの代わりに、私が玄関に向かってそう声を張り上げた。
玄関の開く音がして……。
「アキ?お願いって何よ!」
そう言ったレイナさんは、顔を私たちの方に向けた瞬間、私と同じように声にならない声を出した。
「ちょっ!アキ!?雪乃ちゃん!?どうしたの?何があったの!?」
慌ててブーツを脱ぎ、玄関を上がって側に駆け寄るレイナさん。
「アキ!ねぇ、アキ!」
レイナさんは聖夜さんの名前を叫び、腕を掴み、体を揺すった。
「レイナ、煩いよ」
聖夜さんはそう言って、クスリと笑う。
「こんな状況で黙ってられるわけないでしょ!アキ、何があったの?」
「アキさん、吐血したみたいで……」
私は聖夜さんの代わりにそう答えた。
「吐血!?どうして?何で吐血なんか……。体の具合が良くないの?」
レイナさんがそう聞いても、聖夜さんは私にしたように、ただ笑ってるだけで何も答えなかった。