秘密恋愛
内診が終わり、診察室の椅子に座った。
「えーっと、最終生理日から計算して……」
先生は問診票を見ながらそう言うと、私の方を見た。
「今、11週だね」
「11週?」
「妊娠3ヶ月。で、出産予定日が……」
「あの?」
「ん?」
先生は笑顔で私の方を見た。
「えっと、その、聞かないんですか?」
「何を?」
「産むのか、産まないのか……」
未成年の妊娠。
しかも未婚だ。
どうするのか聞かれるかと思って、先生にそう聞いてみたけど……。
「産みたいんでしょ?」
「えっ?」
先生から意外な答えが返ってきて、目を見開き先生を見た。
「レイナちゃんからそう聞いてるよ。君の事情やお腹の子の父親の事も、産みたいって望んでることも全てね」
先生はさっきと変わらない笑顔でそう言った。
「ここに来る人の事情は様々で、中には雪乃ちゃんみたいに未成年で予想外の妊娠した子も来る。でも僕はどうしたいかなんて聞かない。決めるのは本人の意思だからね」
「私は、産みたいです……」
先生は何も言わずコクンと頷いた。
そして再び問診票に目をやり、すぐにこちらを向く。
「出産予定日は9月11日だね」
「9月、ですか……」
「うん。雪乃ちゃん、産むと決めたんなら僕は君を全力でサポートするからね」
「はい、ありがとうございます」
「おめでとう」
頭を下げていた私は顔を上げて先生を見た。
「おめでとう」
再びそう言われて、嬉しくて涙が込み上げてきた。
「今から泣いてどうするの?」
先生は豪快に笑う。
「だって……」
“おめでとう”って言われたのなんて初めてで。
それが凄く嬉しかったから……。