秘密恋愛




「産みたい……」



お父さんは私の答えはわかっていたと思う。


だけど私の口からそう聞いて、お父さんの口から溜息が漏れた。



「なぁ、雪乃?人を産み育てることは簡単なことではないんだ……」


「わかってるよ……そんなこと……。でも私は産みたいの!」


「雪乃?ストックホルム症候群って知ってるか?」



ストックホルム症候群?


聞いたことない名前に私は首を左右に振った。



「監禁事件や誘拐事件で被害者が犯人と長時間過ごすことで、犯人に同情や好意を抱くこと……。雪乃はそれなんだよ……」


「違う……違う……」



私は激しく首を左右に振った。


お父さんの言ってることは当たってるかもしれない。


だけど、それを認めたくない自分がいた。



「それに、雪乃のお腹にいる子は普通の子じゃないんだよ」


「えっ?」


「犯罪者の子だ」



お父さんにそう言われて、胸がドクンと鳴った。



「その子が大きくなって自分の父親のことを聞かれた時に何て答えるんだ?堂々と答えられるのか?」


「それは……」



私はお父さんから目を逸らした。





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