もっと溺愛以上
「桜、腹減った。何か食わせろ」
「透子さんは?また、仕事?」
「そ。大きな病院の建築現場に行きっ放し。父さんが仕事の後、車で迎えに行くってさ」
苦笑しながらも、それほど気にしていないような有星は、慣れたように我が家のリビングのソファに座った。
ブレザーを脱いで、手元のリモコンで、テレビのチャンネルを変えていく。
その慣れた様子に、私は気持ちが温かくなる。
何度も何度も、こんな有星を見てきた。
両親が共働きの有星は、小さな頃から私の作るご飯を食べに、一駅隣の我が家にやってきた。
夕飯を一緒に食べて、お風呂に入って、時には泊まっていく事もあった。
そんな時の翌朝は、有星のお弁当も用意してあげた。
有星の双子の弟、竜我も一緒の時もあったけれど、高校入学と同時に寮に入ったせいか、今では有星一人が我が家に顔を出す。
小さな頃から、『我が家の怪獣達』と、二人の母である透子さんに言われていた男の子二人も、成長して。
今では、女の子の視線を集める王子様になった。
見た目の格好よさは、二人の父親である濠さんに似たからに違いない。
そして、私の気持ちも視線も、元怪獣である、有星に掴まれてしまった。