もっと溺愛以上


「今日は、母さんが大好きな八宝菜だよ。いっぱい作るから、待っててね」

エプロンを身に着けて、台所に立つ。今日は、検査で入院していた母さんが退院してきた。
とりたてて悪い所はないと、いつも通りの結果にほっとした私は、母さんが大好きな献立を色々用意していた。
病院から一緒に帰ってきた父さんは、私以上に嬉しそうにしていた。

惚れぬいてるもんね……。

弁護士という忙しい仕事をこなしながら、母を気遣い、母のためだけに生きている父。そんなに母に気持ちをぶつけていて、疲れないのかと、聞いてみたことがある。

『この疲れが、愛だ』

真面目な顔で言い切られて、娘としてはどう答えていいのかわからなかった。

まあ、仲のいい夫婦でよろしいことで。

「今日、泊まるから。明日も弁当頼むわ」

「え?……いいけど。大丈夫?ここからだと学校遠いでしょ?」

有星の言葉が、本当は、嬉しいくせに、お姉さん風を吹かせてそう言ってみる。
明日まで一緒にいられる幸せを顔に出さないように気を付けて。
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