もっと溺愛以上
ふふふっと母さんの軽い笑い声が、食卓に響いた。
その声につられるように、父さんも笑っている。

「桜が絵を描きたがってる事、知ってたわよ。誰に似たのか、ずば抜けて成績がいいから、そればかりが目立っていたけど、桜に絵の才能があるのはわかってたし、あなたがそれを楽しんでるって気付いてたわよ」

「母さん……」

まるで、手品の種明かしをするかのように、嬉しげな母さんは、いつもよりも顔色が良くて、本当に綺麗に見えた。
もともと、美しいという言葉が似合う、自慢の母。
そして、その母を愛してやまない父。

たとえ娘の私でも、二人の間に割って入る事なんかできなかった。
いつも、二人が作り上げる甘い雰囲気に、疎外感すら感じていた。

だから、こうして、目の前の二人から同時に向けられる愛情あふれる視線に、どうしても戸惑ってしまう。

「やっと、桜が開花したって感じだな」

父も、これまでになく明るい表情で、頷いてる。



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